れいなゆ小ネタ
床の空き缶を蹴飛ばしたのも気に留めず、転がるように出ていった部下の姿に男は一人で小さく笑う。深夜に帰宅しては着替えとシャワーを済ませて研究室へ戻る生活はさぞ辛かったろう。妻に逃げられた室長は、新婚の若くて将来有望な男をイビってやったと思っているかもしれないが、そんなものを跳ね除ける胆力と頭脳が山田零という男にはあった。
本当は数時間程度、家で休める日もあったのだ。だがわざわざ深夜を選んだのは、可愛い新妻と離れがたくなるのがわかっているからだろう。掴みどころもなく飄々とした振る舞いは時に人を見下しているようにも見えるが、その後ろに隠しているやると決めことを一切の手を抜かずにやり切る義理堅さを男は高く買っていた。
「俺も早く帰って家族に会いたいな」
男はゆっくりと目を閉じた。